杉林は悪者か
スギ林と言うと 花粉症や土砂崩れの象徴として
忌み嫌われる厄介モノ。
さて スギは悪いのか。
水を創り 空気を創ってくれる森。
確かにスギ林を抜けた雨は 浸透浄化と言うより
表面を流れて行く事が多いようです。
原生林(雑木林)と人口の杉林 一番の違いはその
生態系にあります。
=典型的な杉林=
山駆りされたお陰で 林の向こうには空が見えます。
しかし 暗く光のささない土壌には緑がありません。
そこに生態系はありませんね。
反対に原生林と言われる森は まさに鬱蒼としています。
草から低木・ツタから高い木 もちろん動物も。
単一種の樹木だけが育つ事は 標高の高い山以外では考えられません。
それが何を意味するのか?
珈琲をドリップする事を思い出してください。
細かく曳いた豆に お湯をゆっくり落としていきます。
お湯は すぐ落ちていきませんよね。
時間を掛けてゆっくりと落ちていきます。
浸みていくといった表現が適切でしょうか。
多種多様な植物からは 落ち葉や枯れ枝だけでなく
そこで暮らす動物の糞尿や 死体に至まで様々なモノが
その地表に堆積している事でしょう。
それが栄養になり障害になり 新たな命を育み
そして幾重にも重なった土壌を ゆっくりドリップして来た雨水が
浄化され 湧き水や川の流れとして 私達の生活を支えてくれるのです。
そんな感じが 原生林だと思ってください。
それが雨が降っても 動植物が暮らせない地表では
吸収されるどころか 降ってきたままの勢いで
土砂をまきこみながら 表層や地下水脈に濁流として流れ込みます。
単一種の森からは キレイな水は誕生しないばかりで無く
それが表土の土砂崩れを呼ぶ訳です。
さて 杉林が悪いと言ってる訳ではありません。
あえて言えば 植林計画の失敗でしょう。
ただし木を植え 手を入れていけば良いと言う
単純な話には繋がりません。
最近では カーボンオフセットと言う言葉も定着し
木を植える事が良い様な風潮に戻りつつありますが
それは
木を植える事を目的とせず
生態系を創る事を目的にすべきだと考えます。
また 樹木が育った後の活用法も然り。
残念ながら間伐で切った様な木は 建築用には適しません。
それぢゃ捨てるの?パルプにして紙にするの?
平らな山で交通網が発達した山なら それでも採算あうかもしれません。
(驚くくらい材木価格は安いっすが)
しかし そんな山ばかりでは無いのです。
なるべく 手を掛けないで製材として使う事が出来れば
それが一番良いかと思われ。
無垢の木が一番!なんて言う製材業者さんや 建築関係のヒトから
フィンガージョイントや合板・ラミネされた木材は邪道だと言う話を
良く聞きますが それは単に山の持続性を閉ざしているだけ。
山から切り出した木は 一本無駄なく全部使うって言う姿勢や
思想が必要かと考えます。
ある程度育った森は 光合成など殆ど行いません。
同業の皆様 無意味なバッシングは辞めませぅ。
モノには適材適所があるのです。
また
消費者の方々も なるべくそういった素材を選ぶと言う
選択が必要なのでは無いでしょうか。
長くなったので 無理矢理まとめ(笑
■ 植林は木を植えるのでは無く 生態系を創る事を目的とする。
■ 生態系は単一種ではあり得ない。多種多様な生物を。
■ 間伐等 育った木を使う事を確実に流通に乗せる。
何本植樹したから CO2を何グラム相殺した~のでは無く
一見森に見える単一種の植林にはNO!を。
植林とは木を植える事では無く 生態系を創る事を目的にすべき。
こんな事 市民が少し考えるだけでも 着地点は変わってくると思うのです。
って 訳で別にスギが悪い訳ぢゃ無いよって話でした。